概要

MOT~技術経営を学ぶ
 中小企業診断士 村上 知也


1)MOTとは

 MOT(Management of Technology)とは、技術経営のことを指し、様々なアプローチがあります。生産管理をなどのオペレーションを中心に取り組んだものや、新技術の開発などイノベーションを中心に取り組んだものなどです。これらももちろん重要な要素ですが、MOTの最大の目的は「製造業の付加価値を最大化すること」と言えます。そのためには、技術や製品のよって、顧客にとっての価値を作り出し、その顧客価値を自社企業の価値、つまり利益に結びつけることが重要です。
いくら良い製品を作っても、価格競争に巻き込まれて自社の利益に結び付かなければ、付加価値の最大化にはつながりません。例えばデジタル家電分野では、日本の高い技術は評価されつつも、大きな利益を獲得するに至っていません。

 付加価値を獲得するためには、製品の優位性によって差別化ができることが必要ですが、加えて、その差別性に対して「顧客が価値を認めて対価を支払っても良い」といってくれる必要があります。さらに差別化できても、短期間で模倣されるようでは、継続的に高付加価値を獲得することは出来ません。そのためMOTの重要なポイントとしては、組織マネジメントにより、継続的に付加価値を生み出す自社の「コア技術」に関する組織能力を鍛えることにあると言えます。 (出典:MOT[技術経営]入門 延岡健太郎著)


2)コア技術戦略

 では、コア技術とは何でしょうか。競合企業には模倣できない技術があれば製品の差別化が図れ、付加価値を獲得していくことが可能です。しかし革新的な技術であれ、いずれ他社に模倣されてしまいます。模倣を防ぐには、もちろん特許などの知的財産権確保も重要ですが、それ以上に特定分野の技術に競合を上回る投資を集中して、長期的に技術を育成していくことが求められています。

また、単独の技術に投資を集中するのではなく、ある技術領域に関して組織に蓄積された体系的な技術知識を育成していくことが求められています。単独技術であれば、時代の変化と共に優位性を確保できなくなる可能性があり、競合との優位性を継続するには、次々と優位性のある製品を開発・販売していく必要があります。そのためには自社の技術領域、つまり技術プラットフォームの確立が重要となります。これらの技術領域のことを「コア技術」と言い、「コア技術」を育てていくことを「コア技術戦略」と言います。

それでは、実際にどのように「コア技術戦略」を実施してくのでしょうか。まず自社のコア技術を選択する必要があります。選択される技術は狭すぎると単発の商品開発で終わってしまい、長期的に製品開発を行っていくことが出来ません。一方、広すぎると焦点がぼやけ、投下される経営資源も分散して技術優位を構築できません。
まさに、企業のドメインの設定同様です。企業として、顧客に何をどのように提供していくのかしっかり定めた上で、それを支えるコア技術を選定していく必要があります。

コア技術の例としては、シャープの液晶技術や村田製作所のセラミック技術などが挙げられます。シャープの液晶であれば、電卓の液晶から、液晶モニター、テレビと新たな製品領域に同一の「コア技術」を利用して進出し、他社との差別化を図ることが出来ています。このように、ひとつの技術からひとつの製品が作られるのではなく、数多くの製品が生み出されるプラットフォームを構築することが、継続的な優位性の構築につながっています。
これらのコア技術戦略を実施していくと、次の3つの能力が育成されると言われます。

①要素技術、②技術領域の広がり、③コア技術の製品化に関する知識、の能力です。
①の要素技術は、製品を1つ開発するだけでなく、複数の製品で共通に要素技術が再利用されるため、要素技術が企業固有の能力として強化されます。
②技術領域の広がりは、共通して利用される要素技術の他に必要に応じて、要素技術が追加されることになります。
③コア技術の製品化に関する知識は、複数の製品を開発することで、基礎技術だけではなく応用技術として、様々な製品を市場に投入するための能力が蓄積されます。
このように同一プラットフォーム上で、製品開発を継続的に実施することができれば「コア技術」は発展を遂げることになります。


3)コア技術戦略における組織マネジメント

 コア技術を育成し、製品開発を行っていく上で組織のマネジメントは欠かせません。それではコア技術戦略を行う上ではどのような組織がマッチするのでしょうか。組織としては、技術分野別の専門性によって分類された「機能別組織」と製品開発毎に組織される「プロジェクト型組織」が考えられます。
「機能別組織」は、専門性が組織に蓄積されるメリットがある一方で、複数の技術を活用して製品開発を行う場合には、組織の縦割りにより責任や権限の範囲が不明確になりがちです。なにより製品開発コンセプトが明確にできない恐れがあります。

 一方で、「プロジェクト型組織」は製品開発に向けて、機能横断的に必要な資源を集めて、当該製品の開発に邁進できる一方で、プロジェクトが解散すると、開発ノウハウが四散し、能力が蓄積されない可能性があります。

 コア技術戦略の目的は、長期的にある技術領域に関して組織に蓄積された体系的な技術知識を育成していくことにありますので、単純な「プロジェクト型組織」では「コア技術戦略」は実現できません。一方で、「機能別組織」では、技術は蓄積できても市場のニーズに迅速に対応していくのは難しいとされます。これらはまさにトレード・オフの関係にあり、組織を決定する際には何を重視するのか明確にしておかないと、「機能別組織」と「プロジェクト型組織」の間で組織構造を行ったり来たりしてしまうことなります。

 開発リードタイム、製品アーキテクチャアの複雑性、市場・顧客ニーズの複雑性、要素術の革新など自社を取り囲む環境を十分に理解した上で組織構造を決定していくことが求められます。具体的には、複数の製品開発プロジェクトを横通しで確認して、プロジェクト間の連携の活性化や、プロジェクトで生まれた技術の共有化を行う組織や責任者の設置が必要になります。

 継続的な競争優位の確保のため、自社の「コア技術」が何であるのかを確認し、その育成に取り組まれてみてはいかがでしょうか。

以上


  • 最終更新:2011-06-15 12:33:13

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