FREE~無料なITサービス

FREE~無料なITサービスを活用して、コスト削減を進める
      中小企業診断士 村上知也


1)経済性の変化


 IT技術の進展は社会の経済性原則を変えたと言われます。18世紀後半の産業革命後以降では、自動化・機械化による効率化の追求によって規模が重要視される「規模の経済性」が高まりました。その結果、大規模な設備投資を行うことで効率性が飛躍的に向上し、商品ごとの生産コストが低減しました。一方、20世紀末のIT革命では「ネットワークの経済性」が高まったと言われます。デジタルデータであるソフトウェアはいったん完成すると複製が容易なため、利用者が増えれば増えほど、商品ごとの生産コストは減少し続けます。さらに、ワープロソフトのように利用者が多いほど、同一ソフトウェアで作られた文書が流通しやすくなり、利用者の利便性は向上し、提供者側の利益も上昇することになります。近年ではIT化のさらなる促進に伴い、「無料の経済性」が進展したと言われます。ITが普及する以前から無料の経済活動は行われてきました。初回は無料で体験できるが、二回目からは有料となる場合などです。しかしこれは、あくまで初回を経験することで顧客がメリットを感じ、今後有料サービスを利用してもらうことが目的で、顧客はいつまでも無料で利用できるわけでありませんでした。


2)なぜ無料なのか

 現在のIT分野では検索機能だけではなく、ワープロソフトなどの様々な機能まで無料で提供し続けられています。その結果、顧客はコストを負担することなく、無料を享受し続けていられています。では、そのコストは誰が負担しているのでしょうか。

vコストを負担している一人目は広告主です。顧客はサービスを無料で利用する代わりに、広告を閲覧し事業者は広告主より広告料を受け取っています。二人目は無料サービスを特に気に入り、プレミアム(割増料金)を払ってでも、さらに高機能を利用したい顧客です。同じ無料でも、試供品を使った従来型のビジネスモデルでは、無料キャンペーンでサービス全体の5%を提供して、その後95%を買ってもらうことを想定しています。しかし、無料の経済性では、95%の顧客に対して無料を提供し、5%の顧客にプレミアム版を購入してもらうこと成り立っていると言われます(「FREE」クリス・アンダーソン著)。例えば、インターネット電話のSkypeは、パソコン同士の電話費用は無料となりますが、さらにパソコンと電話で通信したいユーザは有料となります。このモデルを可能にしているのは、以下の3点です。

 ①デジタルデータはコピー費用が安価
 ②そのため、無料版を数多く配布して多くの潜在顧客にアクセス可能
 ③そして、その中の5%の顧客が有料版を利用してもらえばビジネスが成り立つ

①と②が実現できるため、③のように少数のユーザにさえ利用してもらえれば採算が成り立ち、無料モデルが普及したと言われます。


3)無料で使えるサービスとは

 このような無料モデルが普及したことで、インターネット上では、有料サービスに比べて遜色の無いものが無料で数多く提供されています。
ここではプロモーションを無料で行えるサービスをいくつか紹介します。
サービス名 サービス内容
①ValuePress! プレスリリースをマスコミ各社に無料で伝えてくれるサービスで、パブリシティに活用できる。
②コマーシャ
ライザー 商品紹介動画を無料で簡単に作成でき、宣伝広告に活用できる。
③POPit 書店や雑貨店などでの店員の手書き風のPOPをホームページ上の商品にも作成でき、宣伝広告に活用できる。
④販促ツール
.com 携帯クーポンの発行やくじびきなど、集客やリピーターに確保に活用できる。
⑤USTREAM 専門の映像機器が不要で、インターネットの映像中継が実施でき、イベント模様を伝えることで、集客に活用できる。
  
※サービス名を検索すると、各サービスの紹介ページが見つかります。

 みなさんは、プロモーションコストをいくらかけているでしょうか。これらのツールを活用することでプロモーションシーンごとのコスト削減が可能になります。
まず、新商品・新サービスを開発して提供したときにプレスリリースはされているでしょうか。自身で実施すると、プレス原稿を新聞社などに持ち込んだり、FAXを送付して送付確認をしたりとの人的コストがかかっています。①のValuePress!を利用するとこれらの人的コスを抑制できます。また、ホームページでは動画などで商品紹介をされているでしょうか。動画は個人で作るのは大変なので外部に発注して作成されることが多いと思います。②のコマーシャライザーを活用することで、簡単に動画を作成することが出来ます。簡単に作成できるということは、季節やタイミングによって今まで専門業者にお願いしてコストを掛けて修正していたものを、無料で変更したいタイミングに合わせて修正が可能となります。さらに、自社店舗に来られる顧客に対してクーポンを発行したり、くじ引きをやって頂いたりするのにも、手間とコストは馬鹿になりません。④の販促ツール.comでは、携帯電話に対して自社のクーポン券の発行や、クイズの実施などが可能となります。
今回はプロモーションの実施ツールに絞ってコスト削減の例を紹介しましたが、様々な業務において多くの無料ツールが存在します。ぜひ自社に適合するサービスを探してみてください。


4)活用に当たっての留意点

 様々なビジネスユースの無料ソフトウェアが提供されているため、自社にとって必要なサービスを取捨選択して利用していく必要があります。また、無料もしくは非常に安価なサービスであるため、従来のような投資の意思決定をして活用を進めるよりも、トライアンドエラーで利用を開始して効果が出せたものだけを継続して利用するほうが、コスト削減に素早く到達できる可能性があります。つまり利用にあたってはスピードが重要になるのではないでしょうか。

以上


  • 最終更新:2011-07-31 11:57:38

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