新規客を固定客に移行


新規客を固定客に移行しよう
   山崎フィールドデザイン研究所 山崎泰嗣

フラッシュマーケティングとは?


フラッシュマーケティング花盛りである。
フラッシュマーケティングとは、商品やサービスを割引価格や特典等のあるクーポンにして、インターネット上において期間限定で販売する手法を言う。一般に24~96時間程度の短い時間(だからフラッシュ)に、集客と販売、見込み顧客の情報収集を行っていく。
このフラッシュマーケティングの代表的な企業が、昨年末から今年の正月にかけて、相当な量のTVCMを打った。ご存じの方もいようが、「グルーポン」という企業である。アメリカで爆発的なヒットをしたのを経て、日本でも昨年の6月から展開を開始している。
事業内容は、フラッシュマーケティングの手法の代表でもある、「共同購入型クーポンの販売」であり、一定の時間内にインターネットサイトにあるクーポンを一定数購入する希望者が揃えば、大幅な割引率のクーポンを取得することができるというものである。特徴は、①時間限定、②最低購入数設定、③数量限定、④1日1クーポン、⑤破格の割引率、⑥実際にある店舗の商品・サービスのクーポン、などの点にある。①時間限定:1日~数日というように購入期間に限定がある。②最低購入数設定:一定数以上(100枚以上等)の購入者数が集まらないと、取引(その価格)が成立しない。そのため、ブログやツイッターといった電子上で購入希望者自身が企業に代わって販売促進活動を行っている。③数量限定:お店側の能力・余力に応じた限定を行うため、「最低購入数100枚、ただし最高でも300枚」といった限定設定を行う。④1日1企業1クーポン:ひとつのクーポンに対して注目を集め、高い集客力を確保するために、基本的に1企業1日1クーポンに限定している。⑤破格の割引率:圧倒的な集客力を店舗側に提供する代わりに、50%~80%の割引率にする。⑥実際にある店舗:リアルな店舗(ネットのみではない)が存在する商品やサービスを提供している。
こういった特徴を持つ共同購入型クーポンサイトは様々な亜種を生み出し。今では200を超えると言われており、各種のサイトが業界や地域、時間帯の特徴を差別化の武器として存在している。


フラッシュマーケティングの活用モデル


フラッシュマーケティングを活用している企業には、飲食店等のサービス業が大変多い。いわゆるサービス業の業種特性である、時間集中性(=繁閑格差)や労働集約性といった観点から生産性を高めることが可能だからである。ある飲食店が、1万円分の食事ができるクーポンを5千円で販売できた場合の1人当たりの収支は次の図表になる。

図表 飲食店クーポン活用時の収支内訳
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飲食店側は、標準価格の30~35%程度という材料コストを考えると赤字になる(この時人件費は固定費として考えている)。それでも、爆発的な高い集客力、22%に及ぶ再来店率(米ウォールストリートジャーナル紙による)から、多くのクーポン購入客の囲い込みを図ることができるため、圧倒的な割引率(50%~80%)に応じている。


成功のポイントは固定客化にあり


つまり、固定客化を進められないと、単なるバーゲンハンターの1度の利用で終わってしまい、賑わったものの営業赤字だけが残ったということにもなりかねない。
そこで、実際に来店されたクーポン購入者を満足させ、再来店促進の仕組みを築くことがポイントになる。クーポン利用者の携帯メールでの囲い込み、再来店時使えるクーポンの直接発信、電子上のポイントカードなど、来店したクーポン利用者に対して具体的な継続囲い込みの施策を打ち出していく必要がある。そうやって初めてクーポンを活用した効果があるといえよう。


固定客化を進めるための企業体質強化


 もちろん、販売促進的な取組み以前として、商品面や接客面での強化が求められる。クーポンを発行したものの、企業の処理能力以上の利用があり、大量のお客が殺到したことで、大きなクレームに繋がることも散見されている。今年正月にマスコミを騒がした、おせち料理のクレーム問題のケースは、企業の能力以上のクーポン販売を行ったことが問題の発端であった。能力以上のことを行ったため、商品の品質、納期に問題を起こし、苦情の対応も後手に回ることになった。
 また、景品表示法の問題点として、割引前の標準価格や定価が、本当に通常から販売されているのかという点も問われている。定価で販売された商品が無く、新しくクーポン販売用に商品開発をした場合、違法な二重価格と言われても反論できないであろう。
こういったフラッシュマーケティングの技法は、ICT(情報通信技術)の驚異的な発展・浸透によって、一気に花開いている。現在では、携帯電話のGPS機能の利用、さらに短時間のクーポンなど日本の携帯電話の特徴を生かした新たなサービスも増えている。
 ぜひ各企業には、自社に合ったフラッシュマーケティング活用の仕組みを作って欲しい。爆発的な集客力を本当の企業収益に結び付ける、新規客→固定客への移行コミュニケーション活動、爆発的な集客力の前提になる商品・サービス力の向上を進めることによって、それが可能になるだろう。

  • 最終更新:2011-07-31 15:34:01

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